研究概要 |
ギャップジャンクションは、細胞間連絡に重要な役割を果たしており、その存在下では細胞が機能的合胞体を形成していることが示唆されている。脊髄後根神経節(DRG : dorsal root ganglion)には知覚神経である偽単極性脊髄神経節細胞とそれを取り巻く衛星細胞が存在している。その各々の神経節細胞の周りにはそれぞれに帰属する数個の衛星細胞が取り巻いている。衛星細胞は、神経節細胞の支持、代謝に重要な役割を果たしていると考えられているがその機能については未だに不明な点が多い。我々は、坐骨神経切断後1、4、7日後のウィスター系雄ラットの脊髄後根神経節の観察を行った。切断後4日までは衛星細胞間にギャップジャンクションが認められたが、7日では認められなくなった。また衛星細胞の形態自体は切断後日を追って幼若な印象を与えるものへと変化していた(2003年4月3日:福岡-日本解剖学会総会発表予定)。また、我々はS-100蛋白を含有すること等、脊髄後根神経節の衛星細胞と類似の性質を持ち定量的研究により適した研究対象として、下垂体濾胞星細胞間にも注日している。我々は、雄ラットにhuman recombinantレプチン、毛様体神経栄養因子(CNTF)を腹腔内投与すると濾胞星細胞間のギャップジャンクションの形成が促進されることを見出し、これに統計的検討を加えて文献発表した(Sakuma et al., 2002)。我々は、衛星細胞間のギャップジャンクションの維持に必要な能力を遺伝子導入することで坐骨神経切断後の神経節細胞の細胞死を予防できる可能性について現在検討を加えているが、濾胞星細胞の場合と同様のサイトカイン治療を脊髄後根神経節の衛星細胞間ギャップジャンクションの形成促進に応用することも同時に検討している。
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