非致死性である関節疾患の遺伝子治療には、導入法の安全性がより重要である。本研究では非ウイルス性導入法であるin vivoエレクトロポレーション法に着目し、関節内組織への有効性・安全性について検討した。さらにプラスミドDNAとしてEpstein-Barr virus(EBV)由来の構造を有するEBVプラスミドベクターを用い、その効果を検討した。 Dark Agouti(DA)ラットの膝関節内に、luciferase遺伝子を組み込んだEBV由来の構造を有するプラスミド(GEG.GL3)または有しないプラスミド(G.GL3)を50μg投与した。直後、関節に皮膚上から様々な電圧(25〜500V)のパルスを加え、3日後に関節内組織におけるluciferase活性を測定した。またGFP遺伝子を組み込んだEBVプラスミドベクター(GEG.EGFP)50μgを同様に投与後150Vのパルス刺激を加え、3日後に導入遺伝子発現の局在を蛍光顕微鏡視下に確認した。 G.GL3、GEG.GL3投与群ともに電圧が高くなるに従い滑膜組織における発現は強くなり、ともに150Vの際に最も高率であった。GEG.GL3投与群では、電気刺激を加えないnaked DNA投与のみの群と比較して、約800倍の導入効率であった。またGEG.GL3投与群ではG.GL3の約10倍の効率が得られた。組織学的には、GEG.EGFP投与群では滑膜に遺伝子発現を認めたが、軟骨・靭帯・半月板にはほとんど認めなかった。 ラット関節腔内に注入したプラスミドDNAに対しin vivoエレクトロポレーション法を応用することで、滑膜に対する遺伝子導入の増強が可能であった。また、EBVプラスミドベクターを組み合わせることで、より高率な導入遺伝子発現が得られた。本法は関節疾患に対する有用な遺伝子導入法になると考える。 今後、本法を遺伝子発現阻害法のひとつとして注目されているshort interference RNA(siRNA)の関節内導入について検討する予定である。
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