研究課題
SSXは滑膜肉腫の原因融合遺伝子SYT-SSXを形成する遺伝子として1994年に単離され、現在までSSX1-9のsubtypeが報告されている。SSX蛋白の機能はまだ不明であるが、正常組織での生理的発現は精巣に限局し、種々の腫瘍で発現が認められ、MAGEなどと同様cancer/testis genesの一員とされている。我々は、大阪府立成人病センター整形外科(中医長、荒木部長)と共同で、当センター病院で切除された骨肉腫17例におけるSSX遺伝子の発現解析を行い、SSXの発現率が94%で他の腫瘍の報告(0-50%)に比べ著しく高いこと、それまで報告がないSSX3の発現が4例で認められたことを見出した(論文1)。さらにNASBA (Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法のPatentを有するKAINOS社と共同で手術微量サンプルにおけるRNA定量系を確立、110例の骨軟部腫瘍(良性73例、悪性37例)におけるSSXの発現を解析した。SSX発現量は21から3.6X10^6copies、対数換算(log10値)で1.3から6.6であり、症例間で発現レベルに大きな差異が観察され、SSXを標的とする新規治療法の対象選択に有用であると考えられた。また、悪性腫瘍群では3.8±1.4(mean±SD)で良性腫瘍群の2.4±0.5に比べ、有意に高値を示し(P<0.0001)、骨軟部腫瘍の良悪性マーカーとしても有用性が示唆された。個別組織型では、滑膜肉腫(6.0±0.2)、骨肉腫(4.1±1.3)で特に高かった。転座切断点の下流にNASBA標的領域を設定したことから、滑膜肉腫では融合遺伝子を、骨肉腫ではSSX遺伝子自体を測定していると考えられ、この二者で特に診断有用性が高いと推察される。現在、SSXを過剰発現する腫瘍細胞株を作成し、生物学的機能を解析している。
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