研究概要 |
マウス脊椎への腫瘍移植条件の決定と麻痺出現の確認 C3H/HeJ (C3)マウス(雄、5-6週)を用いて、同マウス生体内での腫瘍増殖が確認されている線維芽腫瘍由来細胞(American Type Cell Collection, NCTC clone 2472)を腰椎椎体内に経皮的に注入移植する腫瘍脊椎転移モデルを作成した。腫瘍の注入は以下の手順で行なった。(1)ペントバール腹腔内投与によるマウスの麻酔不動化、(2)レントゲン透視下に31G注射針を背部後側方より第4腰椎椎体に刺入、(3)腫瘍細胞(2x10^5/20ml)を注入。移植条件決定のため50個体に対して上記の移植を行い、刺入失敗および麻酔死亡をのぞく36移植個体について移植後4週間の観察を行った。観察期間中22個体(61%)に下肢麻痺が出現し、確認までの平均日数は16±4日であった。麻痺出現時または4週間の観察終了後に全個体の脊椎レントゲン撮影を行い骨破壊の有無を確認すると同時に、腰椎のホルマリン固定標本を作製しHE染色にて腫瘍移植部位の状態を組織学的に確認した。その結果、下肢麻痺の出現した22個体全例でレントゲン写真上骨破壊が確認され、組織標本においても椎体骨を破壊し脊柱管内の脊髄神経に浸潤する腫瘍像が確認された。また麻痺の出現しなかった14個体のうち4個体も肉眼的に背部皮下腫瘤が確認され、レ線または組織標本にて脊椎周囲の軟部組織内に腫瘍増殖が認められたが、脊柱管内への浸潤は認められなかった。以上より、NCTC clone 2472細胞の経皮的椎体注入により、約2週間で椎体の破壊と脊髄周囲への直接浸潤を起こす事が可能であることが確認された。移植腫瘍のこのような進展経過は癌の脊椎転移病変の進行過程と類似しており、同病態のモデルとして使用できると考えられる。
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