人為的酸化ストレスが種々の細胞のアポトーシスを抑制するか否かを検討するため、以下の研究を行った。 1.JurkatヒトT細胞に、抗ヒトFasモノクロール抗体にて、アポトーシスを誘導した(約4時間)。この時、外因性の人為的酸化ストレスとして過酸化水素を、内因性の人為的酸化ストレスとして細胞内で過酸化水素を産生する6-ホルミルプテリン(6FP)を負荷した。アポトーシスの程度は、ヨウ化プロピジウム(PI)とフローサイトメトリーを用いて、核の断片化を定量化することにより、評価した。結果、100μMの過酸化水素はアポトーシスを抑制せず、逆に促進した。一方、10-250μMの6FPはアポトーシスを抑制した。この時、カスパーゼ3の活性化を、活性型カスパーゼ3抗体とフローサイトメトリーを用いて測定したところ、その活性化は抑制されていた。これより、内因性の人為的酸化ストレスがアポトーシスを抑制する可能性が示された。 2.ヒト好中球は、in vitroでは自発的にアポトーシスが進行する(約24時間)。過酸化水素ならびに6FPが、この自発的アポトーシスにおよぼす影響を検討した。100μMの過酸化水素は何ら影響をおよぼさなかったが、100-250μMの6FPはアポトーシスを抑制した。この時、カスパーゼ3の活性化をイムノブロッティングにより、カスパーゼ3の活性を蛍光マイクロプレートリーダにより測定したところ、その活性化と活性は抑制されていた。これより、内因性の人為的酸化ストレスがアポトーシスを抑制する可能性が示された。 3.ラット初代培養肝細胞に腫瘍壊死因子(TNF-α)と転写阻害剤アクチノマイシンDを加えるとアポトーシスが誘導される(約16時間)。過酸化水素ならびに6FPが、このアポトーシスにおよぼす影響を検討したところ、100μMの過酸化水素はアポトーシスを抑制せず、逆に促進した。一方、100-250μMの6FPはこのアポトーシスを抑制した。この時、カスパーゼ3の活性を基質と蛍光マイクロプレートリーダを用いて測定したところ、その活性は抑制されていた。これまた、内因性の人為的酸化ストレスがアポトーシスを抑制する可能性が示された。 以上の結果より、種々の細胞において、人為的に特に内因性に酸化ストレスを負荷することで、アポトーシスの成立を阻止し、細胞死を防ぎうるか可能性が示された。
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