研究課題
本研究においては、若齢ラットin vitro脳幹・脊髄標本に膜電位感受性色素を用いた光学的神経活動イメージング法を応用し、脳幹から脊髄に至る痛覚情報神経処理機構の全容を解明することを目的とした解析を行った。まず脊髄レベルにおける痛覚情報神経処理機構について、脊髄スライス標本に光学的イメージング法を応用し、麻酔臨床で頻用されている局所麻酔薬が脊髄後角神経機構に及ぼす作用をニューロンネットワーク機構のレベルで解明することに成功した。すなわち、局所麻酔薬リドカインとブピバカインについての実験的検討により、これら局所麻酔薬は濃度依存的に脊髄後角神経回路網におけるシナプス伝達を選択的に遮断すること、その作用は脊髄後角浅層(laminae I-II)よりも深層(laminae III-IV)においてより顕著であることを明らかにした。本研究成果は第82回日本生理学会大会(平成17年5月、仙台市)などで発表予定であり、また、英文原著論文として発表するため現在その原稿を準備中である。次いで、脊髄レベルにおける痛覚情報神経処理機構に対する脳幹からの下降性修飾について解析を行った。若齢ラットより脳幹および脊髄を一塊として摘出した。記録用チェンバー内において摘出脳幹脊髄標本の腹側脳幹部が上向き水平になるように置き、脳幹・脊髄移行部で標本を緩やかに曲げ、脊髄(下部頚髄)の横断面が上向き(水平)になるよう固定した。この脊髄(下部頚髄)の横断面における神経活動を光学的イメージング法により解析しうるシステムを完成させた。現在、脳幹部(中脳、橋、延髄)への各種刺激(電気刺激、化学刺激)に対する脊髄後角神経機構への影響を解析中である。今後、新しい鎮痛方法を開発することを念頭に、脳幹からの脊髄痛覚神経機構に対する抑制作用を増強するため薬理学的検討を追加する予定である。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
Japanese Journal of Physiology 55(suppl)(印刷中)
Neuroscience Research 55(suppl)(印刷中)
Neuroscience Letters 366(1)
ページ: 103-106