研究概要 |
1.新規DJ-1結合タンパク質DJBPの同定とAR,DJ-1との相互作用 新規DJ-1結合タンパク質として同定・単離したDJBPは精巣特異的に発現し,同時にアンドロゲン受容体(AR)とも直接結合した.DJBPはARに転写コリプレッサーHDAC1をリクルートすることでARの転写能を抑制し,DJ-1はDJBPを結合・吸収することでARの転写能を回復させた. 2.DJ-1の内分泌攪乱物質による細胞内局在変化 アンドロゲン存在下ではDJ-1とARは細胞核内でドット状に共局在するが,坑アンドロゲンであるヒドロキシフルタミド,内分泌攪乱物質であるニトロフェンなどではARはdiffuse,DJ-1は細胞質に局在変動する.しかしながら,オルニタゾールなどではARは核内のドット状の局在を維持するがDJ-1は細胞質に局在変動した.これらの薬物はいずれもARの転写能を抑制することから,ARの転写能にはDJ-1とARの細胞核内でドット状に共局在が必須と考えられる. 3.DJ-1のプロテアーゼ活性 X線結晶構造解析から古細菌のprotease Iとの類似構造が明かとなり,実際,DJ-1は弱いプロテアーゼ活性を有していた.DJ-1は受精の際,精子頭部に局在し,卵膜への結合・侵入に関与することを明らかにしたので,このステップにプロテアーゼとして機能すると考えられる. 4.活性酸素消去因子としてのDJ-1 過酸化水素水,UVなどの活性酸素誘導因子によりDJ-1は誘導された.過酸化水素水処理細胞内の,処理精製DJ-1は過酸化水素水を自己酸化することで消去しpIが酸化型に変動した.DJ-1のこの機能により過酸化水素水による細胞死が抑制された.DJ-1はパーキンソン氏病PARK7の原因遺伝子であることが明かとなったが,この活性酸素消去因子機能消失が病因と推定される.
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