研究概要 |
膀胱癌は,膀胱上皮内癌(CIS)の標準的な治療法として、BCG膀胱内注入療法が行われているが、約50%で無効あるいは治療抵抗性となり膀胱全摘除術が余儀なくされる。また再発率が高く、浸潤性膀胱癌に移行しやすいG3表在性膀胱癌においてはBCG膀胱内注入療法の有効性は確立されていない。これらCIS、G3膀胱癌では高頻度にp53の変異が認められる。本研究では,P53変異膀胱癌に対して、ポリアルギニンを利用したp53蛋白導入法による癌細胞増殖抑制を目的とし,以下の研究を実施し明らかにした。 1)11個のポリアルギニンをコードするcDNAをp53cDNAに付加し,発現ベクターに組み込んだ。 2)1)で作製したプラスミドを,大腸菌にトランスフォームし,11R-p53蛋白の発現に成功した。 3)大腸菌で発現させた11R-p53をニッケルカラム等で精製し,同精製蛋白を膀胱癌患者由来でp53遺伝子の変異が認められるT24,J82細胞に導入した。11R-p53は,効率よく同細胞に導入されることが確認された。 4)T24およびJ82細胞に導入された11R-p53蛋白の局在について,蛍光免疫染色法にて検討したところ,核内に導入されることが確認された。 5)11R-p53の膀胱癌細胞増殖抑制効果について検討するため,T24およびJ82細胞に11R-p53を導入し,その増殖抑制効果についてWSTアッセイにて検討した。11R-p53は,有意にすべての癌細胞において,その増殖を抑制した。また,その増殖抑制効果は,既存のアデノウイルスを利用した遺伝子導入法と同程度であった。 6)また,11R-p53には,シスプラチンによる癌細胞アポトーシス誘導作用を有意に促進した。 以上の結果より,ポリアルギニンを利用したp53直接蛋白導入法が,膀胱癌に対して,新しい癌治療法として有用であることが確認された。
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