研究概要 |
腎不全、腎盂腎炎、水腎症などにおいて、腎障害の修復の過程は炎症と組織障害による細胞の壊死、残存した腎尿細管細胞の増殖、さらに増殖した細胞の機能再生と分化の3過程に分けられる。腎障害後の効率よい修復には再生時に腎尿細管細胞の充分な増殖、更に機能を持つ腎尿細管細胞への効率の良い再生と分化が必須と考えられる。障害から回復時の細胞増殖にはHGF-c-MET系、VEGFが関与する。また、腎障害後の組織再生時に腎尿細管でprotein kinase C(PKC)の発現誘導が観察されている(Kideney Int. 2001、59:1789-97)。これらの活性化されたPKCはVHL蛋白で分解される。(Okuda H, Shuin T. J Biol Chem. 2001 Sep in press)in vitroで尿細管の形態形成と機能分化にはvon Hipperl-Lindau(VHL)蛋白が関わることが示されている。培養細胞系ではVHL蛋白の発現誘導で腎尿細管細胞が3次元的に尿細管様の管腔構造を形成する。(第5回VHL病シンポジウム抄録)即ち、正常の腎臓の腎障害後の再生では一時的にPKCが利用されこれはVHL蛋白により分解されると考えれる。腎癌の増殖時にはこのVHL蛋白の機能が障害されており増殖のみが先行していると考えられる。今回の研究背景は腎の再生の一時点は腎細胞癌の増殖と同様の過程が起こっているとみなしたことである。 現在、再生に関わる因子を効率よく協調させて腎障害後に腎機能の回復を図るため、腎障害の動物実験モデル(ラットの慢性腎炎と腎不全モデル、腎盂腎炎モデル)を作成し腎障害期、糸球体、腎尿細管細胞の増殖期、更に機能修復と分化の時期にHGF-c-MET系、EGF系、VEGE, VHL蛋白がどのように作用しているかを解析中である。またVHL蛋白を含む各因子の最も効率的な発現時期と発現の維持の方法を検討している。
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