研究概要 |
ビタミンAの輸送に関わるProstagrandin D synthetaseや24p3といったリポカリン群、B型肝炎ウイルスX抗原癌遺伝子により発現抑制されるSuilなど24種類の遺伝子群は、精原細胞の蓄積しているJSDマウス精巣に発現し、精原細胞を欠くW/W^v精巣では発現していない。これらの24遺伝子群すべてが精原細胞だけでなくそれを取り巻くセルトリ細胞でも発現しているため、精巣の初期形成段階では、幹細胞である精原細胞からそれ自身とそれを取り巻く支持細胞の増殖・分化・成熟を制御する何らかの因子が放出されていることが推察されていた。 この精原細胞によるセルトリ細胞遺伝子発現制御をより直接的に証明する目的で、精原細胞とセルトリ細胞の共培養系の樹立を試みた。様々な細胞株や初代培養系の組み合わせを試行錯誤した結果、以下の方法により精原細胞依存的なセルトリ細胞遺伝子発現を検出することに成功した。GFPトランスジェノックマ新生雄マウス精巣からc-Kit陰性細胞を分離し、一週間培養して初代セルトリ細胞の単層を用意する。ここに同じく正常新生マウス精巣のc-Kit陽性細胞を添加し24時間共培養した後、GFP陽性の初代セルトリ細胞のみを分離して、JSD由来遺伝子群の発現をRT-PCRにて解析した。その結果、c-Kit陽性細胞と共培養したときのみにセルトリ細胞からの24p3 mRNA発現が検出された。MHC-IQ, Spi proteinase inhibitorのmRNAは同様な制御パターンを示したが、PTP-TD14を含むそれ以外のJSD由来遺伝子8種類は、精原細胞がなくても初代セルトリ細胞で発現していた。この結果は、セルトリ細胞で24p3などの遺伝子発現が精原細胞との接触により誘導されることを証明すると同時に、JSD由来遺伝子群の発現調節様式には二種類あることを示唆する。
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