研究概要 |
出産のタイミングを決めるメカニズムに、胎仔脳から分泌されるオキシトシンが関与しているかどうかを検討した。今年度は、胎仔脳視床下部室傍核を電気刺激して誘発される母体子宮筋の収縮が、オキシトシン受容体の拮抗剤で阻害されるかどうかを検討した。妊娠22日目のSDラット(10-14週令)を使用した。妊娠ラットをウレタン麻酔(1.3g/kg, i.p.)した後、母体ラットを仰臥位にし、下腹部ついで子宮を切開後、臍帯がつながった状態で胎仔を取り出した。胎仔を透明の塩化ビニール製の円筒に入れ、胎仔頭部を私たちの考案した胎仔固定装置に装着し、歯科用セメントで固定した。電気刺激を行うためにステンレス製の双極電極(直径、0.2mm)を胎仔視床下部室傍核に挿入して固定した。母体の妊娠子宮筋の収縮を測定するために、フォーストランスジューサーを子宮筋に縫合して取りつけた。トランスジューサーで感受された子宮筋の収縮力の変化を、ブリッジボックスを介して圧力アンプに入力増幅し、データ処理システムに取りこみ解析した。胎仔視床下部室傍核を刺激して誘発される母体子宮筋の収縮が、オキシトシン受容体の拮抗剤で阻害されるかどうかを検討するために、胎仔脳刺激によって母体子宮筋の収縮が誘発された直後に、オキシトシン受容体拮抗剤バソトシンを母体に静注して子宮収縮が抑制されるかどうかを観察した。胎仔視床下部室傍核刺激によって誘発された母体子宮筋の収縮は、母体に投与したバソトシン(2〜5μg, i.v.)によって明瞭に抑制された。以上により、胎仔室傍核より分泌されたオキシトシンが母体の子宮筋の収縮を誘発する可能性が示唆された。 平成15年度はこの実験を継続し、以下の二点について検討する予定である。1)出産直前の妊娠ラットにおいて、胎仔血中のオキシトシン濃度が上昇するかどうかを測定する。2)胎仔視床下部室傍核のオキシトシン含有ニューロンの活動が、出産直前に増加するかどうかをFosの発現によって確認する。
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