目的:aminoglycoside (AG)による有毛細胞の細胞死がapoptosisであることを明らかにし、その細胞障害を引き起こす主要な酵素を解明する。 方法:生後6日目のマウス(C57BL/6J)の蝸牛を用い、基底回転側3分の2を培養組織とした。培養後固定しphalloidin-FITCで染色後、レーザー顕微鏡で有毛細胞を観察した。AGはneomycin (NM)を0.1-0.5mM、1mMで用い、calpain inhibitorとしてleupeptinを、caspase inhibitorとしてはBAFを用いた。TUNEL法による染色にはApopTag Peroxidase In Situ Apoptosis Detection Kit (Intergen)を用いた。 結果:NM群では濃度依存性に有毛細胞の障害が観察され、0.1mMから外有毛細胞の、0.4mMから内有毛細胞の減少が認められ、内外有毛細胞の比較では外有毛細胞の方が易障害性であった。leupeptin群では全ての濃度のNMに対し90%以上の外有毛細胞の生存が認められた。内有毛細胞では高濃度のNMに対してはleupeptinによる効果は認められなかった。またBAF群ではneomycinの濃度が0.5mM、1mMでわずかに有毛細胞の生存数の増加を認めたが、その効果はleupeptinの効果に比較するとごく軽微であった。またneomaycin群の組織をTUNEL法で染色した所、有毛細胞と一致する部位にTUNEL陽性細胞が認められた。この陽性細胞はcontrol群では認められなかった。 考察:TUNEL法による観察結果から、このようなAGによる細胞障害はapoptosisの経路によってもたらされると考えられた。さらにcalpainがAGの細胞障害のメカニズムにより強く関与していることが示唆された。
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