研究概要 |
BALBc,57BL6/J, SCIDマウスをそれぞれ用い、下記の複数の経路でアミノ配糖体薬(ゲンタマイシン)を投与した。投与後の聴覚障害はABRにより機能的に確認した。また形態学的には4%パラフォルムアルデヒドにより全身還流固定し、EDTAにより脱灰、パラフィン包埋薄切し、HE染色し組織学的な変化を確認した。1次抗体にcalmodulin、vimentin, neurofirament、Na,K-ATPase, connexin26を用いABC法、蛍光免疫染色を用い蛋白レベルでの障害の有無を確認した。 ゲンタマイシン(400mg-600mg/ml)の腹腔内投与、経鼓膜中耳腔投与法による1回投与では内耳障害は生理的、組織学的にも惹起しないことが確認された。これらの投与法では内耳に移行する薬剤が極めて微量であることが、抗ゲンタマイシン抗体を用いた免疫染色で確認された。 直接内耳に投与する方法ではゲンタマイシンが内耳の感覚細胞に局在することが確認され、構成タンパクの変化も確認された。ただしこの投与法では、物理的な内耳膜迷路に対する侵襲を無視することができず、純粋な薬剤障害による変化を見ているかは疑問が残る。そこで新たに頭蓋内(随腔内)投与法を考案した。頭頂部に手術的に小孔をあけて、ゲンタマイシン(400mg-600mg/ml)20ulを1回投与としたがほとんどの動物は死亡してしまい、逆にそれ以下の濃度では明らかな障害を惹起できないことが確認された。そこで現在、頭蓋内(髄液腔)にブレインインフュージョンキットを留置し浸透圧ポンプを用いゲンタマイシン(40mg/ml)100ulを1週間かけて持続的に注入する方法で投与している。この方法で一部の動物に聴覚障害が見られ、現在組織学的検討を行っているところである。
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