研究概要 |
平成14年度の研究によりチンチラを用いた急性中耳炎の動物実験モデルを確立した。今年度は、シリコン徐放製剤における抗菌薬の濃度による有効性の相違についてさらに検討を加えた。 メロペネム・シリコン徐放製剤 抗菌薬徐放製剤として、カテーテルやシャントに使用されるシリコンエラストマーを担体とし、カルバペネム系抗生物質メロペネム三水和物(meropenem trihydrate,メロペン【○!R】)を充填したものを使用した。剤型によって充填されている薬剤の放出量を変化させることができた。 急性中耳炎動物実験モデルの作成 チンチラ(Chinchilla langer雄1才齢450〜500g)の乳突蜂巣内にnontypable H.influenzae(臨床分離株:I-17)菌液を100μl接種した。接種3日後に鼓膜の発赤、中耳貯留液の存在を確認した。 局所投与量による中耳除菌効果の検討 シリコン徐放製剤局所投与と半量シリコン徐放製剤局所投与とで除菌効果を比較検討した。 すなわち、(1)メロペネム徐放製剤bulla内留置群(10mg/kg)、(2)1/2量メロペネム徐放製剤bulla内留置群(5mg/kg)および(3)対照(感染のみ)の3群で除菌効果について比較検討した。 接種8日後、12日後、21日後に中耳貯留液を採取し、段階希釈した菌液をチョコレート寒天培地に塗布し、24時間インキュベーションした後にコロニー数をカウントし、生菌数(CFU/mL)を算出した。中耳腔内に留置したメロペネムシリコン徐放製剤としてφ0.9mm(30% loading, matrix form)を使用した。メロペネム・シリコン徐放製剤を局所投与した群では菌液接種8日後、15日後、21日後のいずれにおいても、対照群と比較して菌量の減少が見られた。1/2量のメロペネム・シリコン徐放製剤を局所投与した群では接種6日目において菌量の減少が見られたが、12,21日目には明らかな菌量の減少は認められなかった。したがって、メロペネム・シリコン徐放製剤を局所投与した場合、投与後短期間であれば半分量の薬剤でも除菌効果が認められることが判明した。以上の成績は、シリコン徐放製剤はその薬剤放出特性から、充填した薬剤が完全に放出されるわけではなく、少ない薬剤を徐放させることでより大きな殺菌効果が規定できる可能性を示唆するものである。
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