研究概要 |
糖尿病網膜症の血管新生、血管透過性の亢進には血管内皮増殖因子(VEGF)が主要な役割を担っていることが明らかになり、研究代表者もVEGF自体やその調節機構の制御による治療法の開発に関して数々の研究成果をあげてきた。高血圧症もまた糖尿病網膜症を増悪させることが疫学的に知られている。高血圧は血管内圧によって、血管壁を構成する血管細胞が周期的に過剰伸展(stretch)される状態ととらえることが出来る。今回の研究目的はグルコース依存性の各経路、特に酸化ストレスの亢進がstretchによってどのように変化するかを細胞レベルで検討し、高血圧によるより初期の糖尿病網膜症増悪において主要な役割をはたす既存の、もしくは新しいメカニズムを提唱し、さらに高血圧合併糖尿病動物モデルを用いて生体内での役割を確認することである。 本年度は周皮細胞によるin vitroの系で検討した。 (1)ブタ網膜血管周皮細胞をKing GLの方法(King GL et al. J Clin Invest 75:1028,1985)により培養した。 (2)フレクサーセルテンションシステム(米国FLEXCELL社)を用い細胞にstretchを負荷しstretchの周皮細胞のアポトーシス促進効果を明らかにした。続いてstretchが如何にしてそれらの経路を修飾するのかを細胞内シグナル伝達の視点から検討した。我々はすでにstretchが細胞内でtyrosine kinase, PI3-kinase, Akt, MAP-kinase, PKCなどの細胞内シグナル伝達分子群を活性化することを報告しているが、各シグナル分子のinhibitor(genistein, wortmannin, PD98059,GF109203X等)、またはそれぞれの優勢変異型(dominant negative mutant)をアデノウイルスベクターを用いて過剰発現することにより各経路を抑制し、stretchの効果が酸化ストレスを介することを明らかにした。
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