重症の難治性眼表面疾患に対する自己(オート)の粘膜上皮を用いた眼表面再建術の開発を目的として、さまざまな細胞ソースの中から、その細胞生物学的特微および組織採取による利便性等を考慮して、口腔粘膜上皮に注目し、羊膜上での培養口腔粘膜上皮シートの作成を検討した。また作成した口腔粘膜上皮シートを家兎の眼表面に自家移植してその有用性について検討した。まず我々の研究チームは、家兎口腔粘膜を採取して羊膜上で培養した結果、口腔粘膜上皮は羊膜上で生着、増殖し、角膜上皮に類似した5-6層に多分化、重層化した上皮層を形成した。走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡で観察した結果、羊膜上で培養した口腔粘膜上皮シートは細胞間の境界が明瞭で、5-6層によく分化、重層化した上皮の形態を示し、正常の角膜上皮細胞と類似した組織像を示していた。その最表層には無数の微絨毛が存在し、細胞間には多数のデスモゾームによる細胞接着が認められた。作成した口腔粘膜上皮シートを用いて自己移植を家兎に行った。移植直後の時点で、眼表面は従来使用してきた培養角膜上皮シートと類似の透明性を示していた。また移植後48時間後においては、移植された粘膜上皮シートは透明性を維持しており、フルオレセイン染色にて眼表面に欠損なく残存していることを確認した。移植片の周囲は全周にわたりフルオレセインの染色性が認められたため、残存している上皮は周囲の残存結膜上皮のコンタミネーションではないことが確認された。また移植後10日において、移植された粘謨シートは眼表面に残存しており、しかも48時間後と比較して移植した粘膜シートより外側へ伸展していることがフルオレセイン染色より観察された。以上のことより、羊膜上で培養した口腔粘膜上皮シートは眼表面に生着、伸展し、術後透明性を維持することが確認された。
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