研究概要 |
乳児神経芽腫マススクリーニングによる発見症例は、その生存率は98%と非常に高く、一見その目的は達成されているようにみえるが、マス検査陰性後に臨床的に発見される症例(マス陰性例)が数多く存在し、それらは進行症例が多く、予後不良である(J Pediatr Surg. 1998:33,1674-1678)。日本以外で全国規模でマスを施行している国は世界になく、多数のマス発見例及びマス陰性例の詳細な生物学的特性の解析と臨床経過の検討は、マスの有効性の評価及びマス症例の治療方針の決定に直結するだけでなく、神経芽腫全体の生物学的多様性を究明するデータとなることが予想される。 現在までの研究で、神経芽腫の遺伝子異常を高感度かつ迅速に解析を行う手法としてMYCN amp.と1p del.に関してfluorescence in situ hybridization (FISH)による解析を確立し(J Pediatr Surg,1999:34,1615-1619)、また、MYCN amp.と17q gainに関してReal Time PCR (TaqMan^<TM>PCR)による解析を確立した(Cancer Lett. 2001:10,89-94)。 MYCN amp.に関しては、今年度の研究によりFISHとReal Time PCRによる組み合わせが最も正確にamplificationの状態を評価することができて、神経芽腫の悪性度と非常に相関している結果を得ており、この研究成果を現在、投稿中である。 今後は、定量的PCRによりMYCN amp.,17q gain,1p del.,11p del.,14q del.の同時解析を行い、FISH法が可能な検体には、それぞれのtarget geneと同じ染色体上に位置するinternal control geneのプローブを用いた2-color FISHを施行して、その解析結果と患者の臨床経過との相関を検討することにより、神経芽腫全体の遺伝子変化と生物学的特性との関係を明らかにすることを目的に解析が進行中である。
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