研究概要 |
我々はこれまでに、ケロイドの成立におけるアポトーシス耐性の一因として、ケロイド由来線維芽細胞自身の内因性TGF-β1の存在を明らかにしている。このTGF-β1をコントロールすることができれば創傷治癒過程の過剰な瘢痕を克服できると考え、また表皮角化細胞より産生されるサイトカインがケロイド組織内の線維芽細胞の増殖やアポトーシスの制御に関与していると推測した。 今回、インフォームドコンセントの得られた手術検体より採取した正常およびケロイド組織から表皮角化細胞、線維芽細胞の培養を行った。上下2チャンバーになっている6穴プレートを使用し、上部に正常線維芽細胞によるfeeder layer、および表皮角化細胞を、下部に線維芽細胞を種々の組み合わせで播種することにより共培養系を確立し、正常皮膚由来表皮角化細胞あるいはケロイド由来表皮角化細胞との共培養下における正常皮膚およびケロイドの線維芽細胞の増殖とアポトーシス抵抗性について検討した。 この結果、ケロイド由来表皮角化細胞と共培養した線維芽細胞で最も高い細胞増殖率を認め、かつ血清除去下で共培養を行いアポトーシスを誘導すると高いアポトーシス抵抗性を示した。また、アポトーシスに関連するMAPKカスケードの下流に位置するERK, JUNKのリン酸化およびアポトーシス関連タンパク(Fas/FasL, Bc1-2, TGF-β)の発現の解析においても、ケロイド由来表皮角化細胞と共培養した線維芽細胞で、最も高い発現を認めた。以上より、ケロイド表皮は正常表皮に比べ共培養下のケロイド由来線維芽細胞の増殖およびアポトーシス耐性に強い影響を持つことが明らかになった。
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