初年度はアルギン酸自体の神経再生効果を検定した。その結果を反映させてアルギン酸自体の改良を加えた。脊髄神経の再生実験として、約4週間で分解吸収されるように調整した共有結合性架橋アルギン酸を用いてラットの損傷脊髄の再生を評価した。脊髄にやく2ミリのギャップを作成しアルギン酸にて架橋した。移植後3ヶ月の組織ではギャップに多くの再生軸索が観察された。損傷を加えた脊髄に神経幹細胞を直接損傷部位に移植する場合、脳脊髄液を介して移植する場合等も研究した。まず、脊髄に損傷を加え、その組織の経時的変化を観察し、神経幹細胞を移植するための基礎実験を行った。神経幹細胞は胎生16日頃のラット海馬組織より採取し、浮遊培養法によりNeurosphereを得た。これを、損傷を加えた後アルギン酸を移植したラットに移植した。直接損傷部位に移植検討した。また、脊髄に損傷を加えた直後に移植したもの、損傷後3週間経過した後移植したものも検討した。損傷された脊髄は3日目頃よりマクロファージ等の炎症細胞が侵入し、約2週間で損傷が完成し、脊髄組織内に空洞形成されることがわかった。移植した神経幹細胞は宿主の脊髄組織に、いずれも良く生着し増殖しているものと思われた。損傷部位では、いずれの移植法でも一部損傷脊髄内に侵入し、宿主脊髄細胞と相互作用をしていると思われた。免疫組織化学染色により、宿主内に侵入した神経幹細胞は、主に星状膠細胞に分化している姿が得られた。また、数は少ないが、ニューロンに分化していると思われる細胞も見られた。また、希突起膠細胞に分化している細胞はほとんど見られなかった。損傷により形成された空洞を埋めるほどの再生は得られていないが、今後の研究に期待がもてる結果が得られた。
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