私たちは、ES細胞から歯を作る方法の開発および歯の幹細胞の単離を試みた。Msx1およびMsx2発現細胞をEGFPおよびDsRedで識別できるようにしたES細胞を用いて細胞をヌードマウスの皮下に移植し奇形腫を形成させた。蛍光顕微鏡下で奇形腫内で上皮にMsx2、その周囲の間葉組織にMsx1の発現が認められる部分を捜す。この様なMsx1およびMsx2の発現パターンを示す組織は歯胚組織である可能性が高いので、この部分を取り出して腎被膜下に移植し、さらに発生を進めたが、歯を形成させることはできなかった。そのため、別の方法を考えた。すなわち、歯は神経堤細胞由来であるので、ES細胞を神経堤細胞に分化させ、この神経堤細胞を発生中の歯上皮組織と3次元共培養することで歯に分化誘導させるというものである。神経堤細胞に分化したES細胞の識別のために、神経堤細胞のマーカー遺伝子であるconnexin43のpromoterにEGFP遺伝子をつないだトランスジェニックマウスを作成し、このマウス胚からES細胞を樹立した。このES細胞を分化誘導すると緑色蛍光を発する神経堤細胞を得ることができた。現在、ES細胞から分化させることに成功した神経堤細胞と歯上皮組織との3次元共培養を行い、歯胚組織の分化誘導を試みている。歯の幹細胞の単離については、Hoechst33342染色によるSP細胞の存在を胎生11日頃から胎生18日頃までの時期の下顎の歯胚組織で調べたが、見出せなかった。
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