研究概要 |
歯科用ユニット水中の細菌汚染対策は急を要している。私のこれまでの研究により、微電流をユニット水中に通電することにより人為的に電気分解を生じさせ、消耗した残留塩素を復活させることにより、水道水が本来有している消毒作用をホースの末端でも発揮できることが分かってきた。本研究の目的はこの殺菌・消毒作用発現のメカニズムを基礎的に解明することにあるが、本年度の目標として、水道水および生食水中に微電流を通電する前後での残留塩素濃度の測定を行い、どのような変化が生じるのかを詳細に検討することとした。なお、残留塩素はポータブル残留塩素計を用いて測定した。 (1)電源装置を用いて、5、10,15,20mAの電流を水道水及び塩化ナトリウムを定量含ませた蒸留水(以下食塩液)に通電した。その結果、残留塩素濃度がほぼ0mg/Lであった水道水では15mA240分の通電で0.18mg/Lまで復活した。また、初期塩素イオン濃度がそれぞれ40ppm、200ppm存在している生食水では通電60分で、40ppmでは0.25mg/L、200ppmでは0.47mg/Lまで復活した。 (2)水中に各種金属板あるいはゴム類など、歯科用ユニット水が触れる可能性のある物質を入れたときの残留塩素濃度(初期濃度:0.7〜0.85mg/L)の消耗度について測定した。その結果、硬質ガラスと硬質塩ビは通電後240分で残留塩素の保持率が60%以上であったのに対し、フッ素ゴムは約50%、ウレタンゴムは約25%であり、亜鉛メッキ鋼、銅、真鍮などは消耗が激しくほぼゼロになっていた。 以上のことより、残留塩素濃度が非常に低くなった水道水でも微量電流を通電することで復活することが分かった。また、デンタルユニット水中の残留塩素を消耗させる物質として様々なものが考えられ、歯科用ユニット内の金属配管材料やゴム・チューブなども原因の一つとして考えられることが分かった。
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