本研究の目的は、デンタルユニット水に通電させた微弱電流が、水中に含まれる常在細菌の数と、供給ラインのチューブ内面に形成されるバイオフィルムに与える影響を明らかにすることである。現在までの研究で以下のことが明らかとなった。 1.治療ユニットより採取した1000mlの水を、デンタルユニットの水ラインと同様の材質のチュープ内を、週5日9〜17時の時間帯で循環されたところ、6週間経過した後も、循環水1ml中に含まれる細菌数は変化しなかった。一方、チューブ内面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、循環開始24時間後には細菌の存在を認め、1週間後にはバイオフィルムと思われる膜構造の形成を認めた。その後、6週間バイオフィルムは発達する傾向を示した。 2.循環開始後4週間経過した後に、微弱電流の通電を開始したところ、循環水1ml中に含まれる細菌数は、一旦増加する傾向を示したが、通電開始2週間目より減少を示し、最終的にはほとんど認められなくなった。チューブ内面を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、通電開始後、フィルムの形態変化を認めたが、フィルムそのものが消失することは無かった。 3.ORP電極にて循環水の酸化還元電位の形成を行ったところ、通電前は、300mV前後のほぼ一定の値を示したが、通電後は300mVと-50mVの間を規則的に変化した。そのような電位の低下を認めるのは、循環開始した直後2〜3時間で著しかった。 以上の結果より、微弱電流がデンタルユニット水の殺菌に有効である可能性が示唆された。また、その作用には酸化還元電位との関係が推測されるが、詳細の解明にはさらなる研究が必要である。
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