拡散強調MR画像による顎関節関節包炎の病態診断

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14657488
• 研究機関: 昭和大学
• 研究代表者: 佐野 司 昭和大学, 歯学部, 講師 (40241038)
• 研究分担者: 荒木 和之 昭和大学, 歯学部, 助教授 (50184271) ; 高橋 浩二 昭和大学, 歯学部, 講師 (40197140) ; 伊東 祐一 昭和大学, 医学部, 助手 (30266134) ; 岡野 友宏 昭和大学, 歯学部, 教授 (20124688)
• キーワード: 顎関節 / 関節包 / MRI / 拡散強調画像

研究概要

拡散強調画像(diffusion-weighted image,DWI)は、ブラウン運動中の水分子の位相変化を視覚化するものである。MRI(磁気共鳴画像法)において傾斜磁場中の水分子の拡散による動きはボクセル内の位相のずれによる不可逆性の信号低下をきたし、この拡散による信号低下は、パルスシーケンスにも依存することが知られており、ほぼexp^<-kD2GTE3>(kは定数)に従った指数関数的減衰を示す。通常のMRIでは拡散効果は2%を超えない程度の影響を全体の信号強度に与えるのみであり、その効果を描出するのは困難である。しかし、拡散効果に敏感なパルスシーケンスを作ることは理論上可能であり、最近のMRIは,生体内の分子拡散を画像として描出することが可能となってきた。本研究では、顎関節関節包炎の病態診断のためにこの拡散強調画像を応用した新たなMRI診断法を開発することを目的とする。関節包は、炎症が伴った際にT2の延長が予想される。しかし、その周囲に脂肪が存在するため、T2を強調したシークエンスでは関節包を評価することは困難が予想される。本年度は顎関節における拡散強調画像撮像の適切な撮像条件を検討した。その結果、EPIでは基本的に得ることができない矢状断画像をTR 24.00msec、TE 7.39msec、NEX 8、FOV 100、matrix 256、slice 3mm、bandwidth 100の条件で明瞭に撮像することが可能となった。今後、さらに検討を行う予定である。
また、本年度は関節包炎のほかに現在までに検討されていなかった顎関節の臨床症状と関連する病態とMRI所見の関連について論文5編および顎関節のMRI撮像法に関する論文1編を国際雑誌に発表した。

研究成果

• [文献書誌] Sano, T., Widmalm, SE., Yamamoto.M., et al.: "Usefulness of Proton density and T2-weighted vs. T1-weighted MRI in diagnoses of TMJ disk status"Cranio. 21-4. 253-258 (2003)
• [文献書誌] Sano, T., Yamamoto, M., Okano, T., et al.: "Common abnormalities in temporomandibular joint (TMJ) imaging"Curr Probl Diagn Radiol. 33-1. 16-24 (2004)
• [文献書誌] Yamamoto M, Sano T, Okano T.: "Magnetic resonance evidence of joint fluid with temporomandibular joint disorders"J Comput Assist Tomogr. 27-5. 694-698 (2003)
• [文献書誌] Sakuma K, Sano T, Yamamoto M, et al.: "Does decreased T1 signal intensity in the retrodiscal tissue of the temporomandibular _joint reflect increased density of collagen fibres?"Dentomaxillofac Radiol. 32-4. 222-228 (2003)
• [文献書誌] Yano K, Sano T, Okano T.: "A longitudinal study of magnetic resonance (MR) evidence of temporomandibular joint (TMJ) fluid in patients with TMJ disorders"Cranio. 22-1. 64-71 (2004)
• [文献書誌] Sano, T., Westesson, PL., Yamamoto, M., et al.: "Differences in temporomandibular joint pain and age distribution between marrow edema and osteonecrosis in the mandibular condyle"Cranio. (In press).