昨年度に作製した抗Dentin Matrix Protein-1抗体(以下、抗DMP-1抗体)を用いて、窩洞形成後のラットの臼歯におけるDMP-1の発現の有無とその局在について免疫組織化学的に検索した。9週齢雄性ウィスター系ラットの上顎第一臼歯近心面に、全身麻酔下でラウンドバーを用いて深さ約0.4mmの窩洞を形成し、グラスアイオノマーセメントにて仮封を行った。窩洞形成後0、1、2、3、5、7、14および28日目に同ラットを全身麻酔下にて脱血、潅流固定(6%パラホルムアルデヒド)し、被験歯である上顎第一臼歯を歯槽骨とともに摘出した。採取した被験歯を10時間浸漬固定した後、10日間脱灰(10%EDTA)を行い、通法にしたがってパラフィン包埋し、ミクロトームにて厚さ5μmの連続切片を作製した。これらの切片に対してヘマトキシリン・エオジン染色を施し、光学顕微鏡下にて病理組織学的に評価したところ、窩洞形成後14日目以降の試料において窩洞直下の歯髄腔内に修復象牙質の形成が認められた。さらに他の切片に対して、昨年度に作製した抗DMP-1抗体を用いた免疫染色を行ったところ、窩洞形成後3日目の試料の窩洞直下の象牙細管に沿ってDMP-1の発現が強く認められた。DMP-1の発現は窩洞形成後28日目まで継続して認められた。 これらのことから、窩洞形成という刺激に対して象牙芽細胞が反応し、DMP-1の発現が認められることが明らかとなった。また、DMP-1の発現を認めた時期以降に修復象牙質の形成が認められたことより、DMP-1が修復象牙質の形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆され、象牙質再生医療への展望が開けたと考えられる。
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