味覚は情動や体調により変動することが知られている事から、ストレスが症状発現に関与すると考えられ、ストレス状態の把握が重要となる。疲労感や脱力感を伴う作業をさせると、キニーネに対する味覚感受性が低下するという報告がある。苦味は毒物のシグナルであると同時に、嗜好品にとっても必要不可欠な味である。そこで苦味の代表的物質であるキニーネの硫酸化合物が紫外線照射下(UV下)において発光する特性を応用し、苦味と関連する唾液中のタンパク質の検出することを目的としている。 方法として、採取したヒト全唾液を凍結乾燥した後、0.08%硫酸キニーネ溶液にて溶解し、アガロースゲル電気泳動のサンプルとした。アガロース電気泳動は、2%アガロースを用い、10℃、50V、175分の条件で行った。アガロース電気泳動終了後のUV下のアガロースゲルと同ゲルをCBB染色したものを比較したところ、発光部位とCBB染色部位の一致がみられた。従って、硫酸キニーネ発光部位にタンパク質の存在が確認できた。続いて泳動後、UV下にて発光部位を確認し、同部位を切り出した。その後、切り出したゲルを細かく刻み、アトプレップチューブにて遠心濾過を行い、回収した溶出液をサンプルとしてSDS-PAGE (Laemmli法)を行った後、銀染色を行った。その結果、6.5kDa以下の染色部位が確認できた。従って、6.5kDa以下のペプチドがキニーネなどの苦味物質とと挙動を共にしていることが示唆された。次年度はシーケンス等の結果をより詳細にまとめ、構築する予定である。
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