研究概要 |
口腔機能を模した、上下顎全体を含み、動的な咬合力を加えることができるartificial mouthを開発し、咬合機能が、材料に及ぼす影響と補綴材料や構造が咬合機能に与える影響を相互に調べることを目的として研究を開始した。今回は,その第一段階として顎模型の荷重試験による咬合力について調べた. 材料および方法 市販のエポキシレジン製頭蓋骨複製模型(ニッシン)を用い,顎間関係の修正、歯牙位置の修正,歯牙の削合(咬合調整)を行ってintercuspal positionとなるように調整した.各歯牙は歯根膜を模したビニールシリコーンゴム印象材を介して歯槽部に固定した.次に材料試験機(オートグラフDCS5000(島津)を用い,下顎の左右第二大臼歯の中間点にロードセル(1000N)を介してクロスヘッドの垂直荷重が加わるようにジグを用いて上顎部分の模型を固定した.下顎部分の模型を中心咬合位(centric occlusion)で接触させ,材料試験機のベースに硬質石こうを用いて固定した.1000Nまで模型に荷重を加え,50N毎に模型の上下顎に加わる咬合力をDental Prescale(50HR ; GC)に記録した.Dental Prescaleに記録された咬合力を咬合力測定器(オクルーザー:GC)を用いて解析し,咬合面積,平均圧力,咬合力,有効圧を求めた.同様のDental Prescaleを用いて5名の成人男子の咬合力(biting force)も記録し,模型の解析データと比較対照した. 結果および考察 顎模型の荷重試験による咬合力はy=0.5819x+61.426(R2=0.8647)y : biting force(N), x:垂直荷重(N)の関係が得られ,垂直荷重に比例した60%に相当する咬合力が得られることが明らかとなった.また,このときの咬合面積はy=0.01x+2.1117(R2=0.7216)y : biting area(mm2)x:垂直荷重(N)であった.また,成人男子5名の咬合力は717〜923Nにあり,咬合面積は16.5〜22.1mm2,にあった. 以上のことから,顎模型には1000N以上の荷重が必要とされるものと考えられた.また,biting areaは成人男子と比較して小さく,咬合調整の検討が必要と考えられた.更に,片側荷重の場合は800Nで模型の歯槽頂部に亀裂が認められたことから、エポキシレジン製模型の強化が必要と考えられた。
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