本研究の目的は歯髄および歯根膜組織から再生療法による歯槽骨再生のため骨原性幹細胞あるいはより未分化な間葉系幹細胞分離法の樹立にある。 インフォームド・コンセントを得た上で、抜去された埋伏智歯を回収し歯髄組織を採取した。歯髄組織を細切後、デイスパーゼ・コラゲナーゼ消化を行い細胞を回収した。回収した細胞を培養皿に繙種し10%FBS添加DMEM培地で培養したところ、細胞の形態は均一で、紡錘形をした線維芽細胞様であり、細胞の増殖は早く倍化時間はほぼ2日であった。コンフルエントに達しても結節を形成することはなく、花筵状に増殖した。次に、骨芽細胞分化培地としてアスコルビン酸、グリセロリン酸、デキサメタゾンを添加した培地で培養した。細胞はより密に増殖し、一部結節状の細胞塊を形成したが、細胞形態は骨芽細胞様の多角形にはならず紡錘形のままであった。アルカリフォスファターゼ活性を測定したところ、対照群が全く活性を示さないのに対し僅かにアルカリフォスファターゼ活性を検出した。しかし、細胞層に対するアルカリフォスファターゼ染色およびフォン・コッサ染色は陰性であった。さらに、骨芽細胞を誘導するために培地にrhBMP-2を100ng/mlの濃度まで添加したところ用量依存的にアルカリフォスファターゼ活性の上昇を認めた。しかし、この活性も陽性対照とした骨髄由来細胞に較べると10分に1程度と低いものであった。歯根膜からも細胞を回収し、同様に培養したところ、一部複数の突起を有する細胞の存在を認め、骨芽細胞分化培地を用い培養することによって、僅かながら結節状の細胞塊を認めた。この結節はアルカリフォスファターゼ染色およびフォン・コッサ染色陽性であった。現在、この細胞に対するrhBMP-2の影響を検討中である。 歯髄由来細胞にはほとんど骨原性細胞が含まれていないことが分かったが、今後、より未分化な細胞採取する方法を検討する必要がある。
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