研究概要 |
本研究は,健康成人ボランティアを対象に,静脈内鎮静法によって引き起こされると考えられる,嚥下に関連した中枢神経活動への影響を,機能的磁気共鳴画像(機能的MRI)を用いることによって評価することが,目的であった。平成14年度の研究結果として,大脳皮質運動野において嚥下によって賦活する部位の神経活動が,静脈内鎮静法によって抑制される傾向がみられた。さらに前年度(平成15年度)の研究結果から,静脈内鎮静法による高位の中枢神経における嚥下動作の抑制は,静脈麻酔薬の用量依存性であることが示唆された。これらの結果をもとに,本年度は静脈麻酔薬の血中濃度と神経活動との関連を調べること,さらに,大脳皮質運動野だけでなく,脳内の各賦活領域に対して,静脈麻酔薬がどのような影響を及ぼすかを検討した。方法はこれまでと同様に,嚥下動作課題として,遠隔操作によってシリンジから1回1.5mlの蒸留水を20秒間隔で10回投与し,MR画像撮影は前交連〜後交連平面を基準に頭頂部から脳底部までとし,嚥下動作中に2秒間隔で100回撮像した。神経活動の評価として,嚥下動作課題を与え,嚥下時の機能的MRI画像から非実行時のMRI画像を差し引き,MR信号強度を算出し,T1強調画像と重ね合わせることによって,解剖学的脳賦活部位を同定した。静脈麻酔薬であるプロポフォールを最初の5分間に6mg/kg/hまたは4mg/kg/hの速度で5分間投与した後に,3mg/kg/hまたは2mg/kg/hの速度で25分間投与した。その結果,大脳皮質運動野以外の脳内賦活領域として,大脳皮質感覚野にも賦活部位が認められたが,静脈内鎮静法によって大脳皮質運動野と同様に神経活動の抑制傾向が認められた。これら結果から,静脈内鎮静法においては,脳内賦活部位での神経活動が全般的に抑制されることが示唆された。
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