1.ヒト耳下腺からの未分化上皮細胞の分離と腺房細胞への分化:ヒト耳下腺をデキサメサゾン、インシュリン、EGFを加えたカルシュウム(Ca)濃度0.2mMの無血清培地で培養すると、均一な上皮細胞が得られる。細胞は機能・形態的に未分化な上皮細胞で同一の培地中で形質転換することなく8〜15代程度継代可能である。Ca濃度を0.5から1.0mMに上げると、細胞間にはデスモソームが再構築され、細胞は互いに接着し管腔を形成し、アミラーゼ産生能をもつ腺房細胞へと分化した。また、この条件下での細胞間接着および細胞分化にプロテインキナーゼCが関与していた。 2.分枝形成におけるHGFの役割:唾液腺臓器形成に最も重要な過程である分枝形成をマウス胎仔唾液腺原基を用いて器官培養法にて調べた。その結果、分枝形成には細胞外基質と間葉組織が必要であることが明かとなった。特に、HGFが強い分枝形成促進活性をもつことを示唆した。唾液腺原基上皮はHGFを発現しておらず、上皮のみでは分枝形成を示さない。しかし、上皮はHGFレセプターであるc-Metを発現しており、周囲間葉組織由来のHGFによってパラクライン機構によって唾液腺は発育、分枝形成することが示唆された。
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