健康日本21で喫煙の全身への悪影響が指摘され、禁煙、節煙に対する支援の推進が求められており、歯科においても歯周疾患の治療や予防の一環として重要視されている。実際の歯科健康管理の場において、とりわけ喫煙率の増加が著しい20〜30歳代では歯周疾患の症状が軽いケースが多く、禁煙を促し、行動変容にまで結び付けるには、むしろ口臭との関連を指摘したほうが禁煙支援の効率化を図れる可能性がある。そこで、今回、本研究ではタバコと口臭の関連性をより明らかにすべく、以下の検討を行った。 九大歯学部予防歯科外来の成人患者112名(平均年齢48歳)を対象として、質問紙票による生活習慣、特に喫煙習慣の把握、口腔内診査、安静時唾液量の測定、舌苔の付着状態、口臭の官能試験、ガスクロマトグラフィーを用いた口臭原因物質の測定(硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、総揮発性硫化物量)およびハリメーターによる測定を行い、対象群を40歳未満(N=29)、40〜50歳群(N=57)、60歳以上(N=26)の3群に分けて検討し、以下の結果を得た。 1.一分間あたりの安静時唾液流出量は非喫煙者と比較して40〜50歳群喫煙者で有意な増加が認められた(p=0.021:t-test)。 2.口臭の原因物質各々の量はいずれも統計的有意ではないが喫煙者で低い傾向が認められた。 3.口臭の官能試験が陽性の者が40〜50歳群の喫煙者で有意に多いことが認められた(p=0.043:x^2 test)。 以上の結果から、喫煙は40〜50歳群で安静時唾液流出量の増加に影響し、口臭の増加にも寄与していると考えられた。また、この傾向は所謂、口臭原因物質とは別の因子が関与していることが考えられ、本研究は喫煙と口臭との関連性を指摘し、禁煙支援を行っていく上での根拠となるものであった。
|