研究概要 |
哺乳類における小胞体ストレス誘導遺伝子(HRD1・DER1・KF-1・RNF26)をバイオインフォマティクス的解析により,単離・同定した.これらの遺伝子の特徴として,小胞体に局在し,小胞体に蓄積した変性タンパク質の分解系である小胞体関連分解(ER associated degradation : ERAD)に関与する遺伝子であることが判明した.さらに,HRD1およびKF-1はユビキチンリガーゼ活性を有することを明らかにした. また,これらが小胞体ストレスによって誘導されること,さらにIRE1およびATF6などの小胞体ストレスセンサー分子によって誘導されることを発見した.さらにこれらの遺伝子のプロモータ領域について解析し,IRE1/ATF6の依存度に遺伝子ごとに差があることを見出している. ERAD関連遺伝子は小胞体ストレスによって誘導され,小胞体に蓄積した変性タンパク質を分解・除去することで小胞体ストレス防御作用を有する.そこでHRD1を哺乳類細胞に過剰発現させることによって小胞体ストレスによる細胞死が抑制されるか解析したところ,小胞体ストレス特異的に細胞死を抑制することを示した. 低酸素ストレスや脳虚血によって誘導されるPDIは単独で強制発現させても低酸素・脳虚血ストレスに対して抵抗性を示すことをこれまでの研究で見出している.私たちはさらに,PD1結合蛋白質として小胞体膜蛋白質ubiquilinを単離し,それがPDIの低酸素ストレスによるニューロン死抑制作用を増強することを明らかにした.さらに,ubiquilinが低酸素ストレスによる小胞体ストレスによって誘導されるアポトーシス促進転写因子CHOPの誘導を抑制したことから,PDIやubiquilinの低酸素ストレス防御作用は小胞体ストレス抑制によるものであることが,示唆される結果を得た.
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