研究概要 |
ヒト遺伝子疾患の再生移植治療法の開発を目指し、遺伝性酵素欠損症の疾患モデルマウスへの障害組織への細胞補充を目的として、マウス胚性幹(ES)細胞から組織指向性細胞株を誘導・樹立する研究を進め、今年度は下記の成果を得た。 1 中枢神経症状を伴うヒト遺伝性糖質代謝異常症GM2-gangliosidosisの疾患モデルマウス(Sandhoff病マウス)の発症の初期過程から、GM2-gangliosideの蓄積に伴い、ケモカイン(細胞誘引因子)の一種であるmacrophage inflammatory factor-1α(MIP-1α)が脳内で特異的に誘導されることが明らかになった。このMIP-1αは組織異常シグナルの一つと考えられるが、今後このケモカイン-レセプター系が脳指向性または移行性細胞のターゲッティングに応用できると示唆されたFGF2,EGFおよびIGF1等の増殖因子が協同してES細胞の浸潤を促進することが明らかになった。 2 マウスES細胞から、神経系への多分化能と増殖能を示す神経幹細胞を誘導し、さらに細胞不死化遺伝子として、SV-40T抗原およびテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子を導入した細胞株を樹立した。得られた細胞株は分化マーカーのnestinおよびA2B5に対し免疫陽性であり、また一部が04およびGFAPに対し弱陽性を示した。従ってマウスES細胞から樹立された不死化細胞株はグリア前駆細胞と考えれた。現在、Sandhoff病マウスで欠損しているβ-hexosaminidase β-subunit遺伝子を導入し、細胞外に過剰発現した酵素が分泌されるような細胞株の単離を試みている。得られた細胞株を用いた脳内へ移植した際のクロスコレクション効果により、Sandhoff病マウスの細胞移植治療効果が期待される
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