研究課題
我々は、マウスおよびヒトとの脳において特異的に発現しているが、その機能が不明な新規スルホトランスフェラーゼを見出した。本研究の目的は脳における本酵素の機能を解明することであり、その実験手法としてアデノウイルスベクターを用い、アンチセンスmRNAを発現させる。このウイルスを用い脳に導入して一過性に酵素の発現を抑え、マウスにおける本酵素の機能解析を行い、ヒトにおける生理機能を予測することである。本年度の研究は、単離したマウスあるいはヒトST5cDNAをバクテリアに発現させ、リコンビナントタンパクを単離精製した。この精製タンパクを用いて特異性の高い抗体を作成した。現在組織染色にて、脳のどのような部位あるいは細胞にST5が発現しているのかの検討を行っている。また、基質となる化合物は、高い基質濃度においては、多少の触媒活性をしますことが判明したが、特性の高い基質はまだ見いだせていない。一方、アデノウイルスベクターを用いたアンチセンスmRNAの発現については、長いアンチセンスRNAを発現すると細胞死を起こすため、本研究では現在注目されているRNAi手法を用いることにした。RNAiを効率よく発現させるためには、RNAポリメラーゼIII依存性のU6 snRNAあるいはRNA H1のプロモーターを用いることが好ましい。そこでヒトU6snRNAあるいはマウスRNA H1のプロモーターをそれぞれのゲノムDNAよりPCRによって単離し、これをアデノウイルスターゲットベクターに組み込むことにより、RNAi発現アデノウイルスベクターを開発した。現在、マウスRNA H1のプロモーターの下流に細胞内でRNAiを生成する様に工夫されたマウス,ST5A断片を組み込み、ST5A-RNAi発現アデノウイルスベクターを作成中である。来年度は、ST5A-RNAi発現アデノウイルスを培養細胞に発現させ、ST5Aの発現を抑えることを確認した後に、マウスにウイルスを投与しST5Aの機能の解析を行う予定である。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)