本研究はCYP3A4活性の個人差を解明することを目的とするが、近年、CYP3A5などの同族分子種の関与も指摘されていることから、解析対象とする遺伝子をCYP3A4に加え、3A5、3A7、pseudo geneまでに拡大した。また、インプリント制御を考慮する場合、周辺の遺伝子の構造も明らかにすることが必要となるため、同じ7番染色体に位置し、CYP3A分子種と基質特異性が類似する薬物輸送タンパクであるp-糖タンパク(MDR1)も標的遺伝子に加えた。 ヒト胎盤、肝臓よりゲノムDNAおよびmRNAを抽出し、試料とした。インプリント制御の有無を評価するためには、マーカーとなる変異の特定が必要であることから、上記対象遺伝子の多型解析をゲノムDNAを用い行った。 その結果、CYP3A5、MDR1には適当なSNPsの存在が確認され、本SNPsをマーカーに両試料を用い、インプリント制御の有無を確認したところ、少なくとも肝臓ではbi-allelicな発現を認め、制御を受けないことが確認された。 一方、CYP3A4については、適当なSNPsが認められなかったことから、核内RNAの発現を指標とした。しかし、PCRが不安定なため、一定の傾向が得られなかった。核内RNAが極微量なこと、DNAの混入がその原因と考えられた。現在、RNAとDNAを判別可能なPCR条件を検討中である。 今後は、臓器特異性等を考慮した制御の有無についても検討する予定である。
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