研究概要 |
現在、酸化ストレスが多くの疾患に関与していることが明らかとなっているが、その簡便な評価法は確立されていない。本研究は、酸化物質のより蛍光物質へと変換され、蛍光を生じる化学物質である2,7-dichlorofluorescin diacetate(DCFH-DA)を用いたフローサイトメトリーによる新規酸化ストレス検出法の確立をその目的としている。本年度は昨年度確立したこのフローサイトメトリーによる新規酸化ストレス検出法の有用性を確認した。赤血球型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)は赤血球におけるヘム合成の初発酵素であり、この遺伝子の変異は遺伝性のX染色体連鎖性鉄芽球性貧血の原因と考えられている。我々はこのALAS-E欠損ES細胞を樹立し、さらにin vitroにて成体型赤芽球へと分化誘導した。その形質を詳細に解析した結果、このALAS-E欠損赤芽球内には鉄の蓄積が見られることが明らかとなった。そこで、このin vivoで得られたALAS-E欠損赤芽球の酸化ストレス状態を、新規に確立したフローサイトメトリーによる酸化ストレス検出法を用いて評価したところ、野生型赤芽球と比べ過剰な酸化ストレス状態にあることが明らかとなった。またこれらin vitroで得られた赤芽球はin vivoの赤芽球と比べ、酸化ストレスレベルが格段に高いことも明らかとなった。これらの結果から本研究で確立した新規酸化ストレス検出法は、実際に細胞レベルでの酸化ストレス状態が解析可能な系であることが確認できた。
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