研究概要 |
本研究の目的は、転倒に伴う骨折の既往がある地域高齢者の転倒予防自己効力感について、転倒予防教室の介入効果を評価することである。 研究期間は2002年4月から2002年12月である。対象は新宿区の総合病院で開催されている転倒予防教室に参加した地域高齢者51名(男性10名、女性41名、平均年齢71.9±5.4才)で、このうち、転倒に伴う骨折の既往がある者11名(72.9±6.4才)を骨折群、その他の参加者40名(71.7±5.1才)を対照群とした。介入は、約8週間に、健康診断と身体機能評価、運動指導、総合的な生活指導等を行っている。これらの指導を実施する際、Banduraの提唱する自己効力感理論の効力感に影響する4つの情報源(制御体験、代理体験、社会的説得、生理的・感情的変化の自覚)を参考に、運動の達成感を高めたり、身体機能の向上を参加高齢者自身が実感できるような働きかけを行った。評価は、介入開始時および修了時に、転倒予防自己効力感(TinettiのFalls Efficacy Scaleを改変,以下F-SE)、身体機能(10m牟力歩行時間、最大一歩幅、40cm踏み台昇降、継ぎ足歩行)を測定した。 介入開始時の平均年齢、身体機能は、左最大一歩幅をのぞき、骨折群と対照群の間に有意な違いはみられなかった。F-SEについては、対照群(89.9±11.6)に比べ、骨折群(77.8±18.2)の平均スコアは低かったが、統計的な有意差はなかった。F-SEの介入前後の変化は、対照群は開始時(89.9±11.6)と修了時(89.0±11.6)のスコアに変化がなかったのに対し、骨折群は開始時(77.8±18.2)から修了時(81.2±16.7)にスコアが向上した(P<.05)。 転倒予防教室が骨折を伴う転倒を経験している地域高齢者の転倒に関連する自己効力感を高めるために有効である可能性が示された。
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