本研究は、昨年度には、慢性血液透析導入患者の気持ちの状態をペンタッチ型コンピュータを用いて入力し、それをPCで処理するプログラムを開発した。本年度は昨年度に作成したプログラムの修正と、英語版の入力システムを作成した。 当初、血液透析導入患者が自分自身で気持ちの状態を入力できることを目指していたが、透析導入前後の時期は患者の体調の変化によってなかなか予測できず、タイミングよく入力をしてもらうことが難しいこと、透析導入前後は体調が思わしくなく、コンピュータに気持ちを入力する余裕がない患者が多い等の現状から、患者自身による入力は実施できなかった。したがって、今年度は、開発した「"KIMOCHI" Monitoring System in Dialysis」に、既存のデータを入力してその操作性、適用可能性を検討した。その結果、手指でのパネルタッチ操作による気持ちの選択と割合の入力はスムーズにできるものとなった。しかしこのシステムは、複数のコンピュータからの入力データを結合する事ができない。システムをより広く活用して、多くのデータを入力して蓄積していくためにさらなるシステムの開発が課題である。 気持ちの入力に関しては、看護師が患者から聞き取った気持ちをあらかじめ提示した13の気持ちに分類し、また新たな気持ちの抽出を可能にする目的で、それぞれの気持ちの構成要素の抽出を試みた。その結果、(1)気持ちを引き起こす外部からの力・出来事、(2)外界と自分との関係、(3)見ている視点(焦点)、(4)自己概念との距離、(5)自己内部のエネルギーの動きという、5要素が明らかになった。 システムを用いる看護師が気持ちおよびシステムの活用法を理解するための教育プログラムの確立と、患者への適用方法、および導入期のみならず継続的に気持ちをモニターできる看護アプローチとさらなるシステムの開発が今後の課題と考える。
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