研究概要 |
初年度の本年はヨーロッパに現存する東アジア伝統医学関連資料のデータベース作成を行った。文献調査対象としてはライデン大学、パリ大学医学部の図書館を選択した。またこの過程で入手した論文のうち、オランダ商館医であったCarl Peter Thunbergが帰国後ウプサラ大学にて審査した弟子Hallmanの灸に関する学位請求論文(原文ラテン語)についてその邦訳作成を開始した。当該論文はNeedhamがその著Celestial Lancetにおいてすでに言及しているが「Thunbergはその論文を親切にみた」という簡単なコメントしか残しておらず、Hallmanの出自やThunbergとの関係、また先行する灸に関する欧文文献(Engelbert Kaempferの『廻国奇観』、ten Rhijneの著作)との関係については不明な点が残されているため今後さらに調査を進めていきたい。 次年度は16世紀以降東アジアにおいて活躍したHermann Buschof, ten Rhijne, Kaempfer、Thunberg、Sieboldらの手になる伝統医学関連文献相互の引用関係にも目を配りつつ引き続き資料蒐集を行う。またこれに並行して、19世紀のヨーロッパにおいて鍼灸治療法の治療機序に対する解釈が劇的に変化していった背景について調査を進めていく予定である。
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