研究概要 |
運動を行った際、その効果には個人差が認められるが、この個人差には遺伝的要因が関与していることが明らかとなっている。本研究ではこの個人差を規定する遺伝子を探るため、高齢男性(n=15)を対象に、筋力トレーニングを実施した。筋力トレーニングは、等速性筋力測定器(Biodex)を用い、両脚の等速性膝・股関節伸展/屈曲運動を行った。トレーニング期間は12週間であった。その結果、膝関節伸展筋力は約11%の増加を示した。このトレーニング効果には、1.3%〜33.1%もの個人差が認められた。これら個人差における遺伝的要因を検討するため、15名の被検者のうち、効果の少なかった被検者3名および効果の大きかった被検者3名を対象に、トレーニング後において、大腿部の外側広筋より筋生検を行い、筋サンプルを得た。この筋サンプルにおける遺伝子発現を検討するため、本研究では、DNAチップを用いる。本研究で用いるDNAチップには、約30,000遺伝子がスポットされている既存のDNAチップを用いることとした。現在は、このDNAチップにハイブリさせるRNAを調整中である。また、これら個人差に関与する環境要因として日常活動量が考えられるが、個人差に日常活動量がどの程度関与しているかを検討するため、その日常活動量をライフコーダにて調べた。その結果日常活動量には50kcal/dayから557kcal/dayと大きな個人差が認められた。これら日常活動量のトレーニング効果に対する貢献度も現在検討中である。 H15年度では、さらに被検者数を増やし、同様に検討を行っていく。また、トレーニング効果にみられる個人差と関連のみられた遺伝子変動について、その遺伝子のプロモータ領域における多型の解析を行っていく予定である。
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