研究概要 |
本研究では,筋力トレーニングにみられる効果の個人差と関連する遺伝子を包括的に検索するために,DNAマイクロアレイ法を用いてトレーニングによる遺伝子発現の動態を明らかにし,筋力トレーニング効果大と効果小の被験者において発現に差がみられる遺伝子を検索することを目的とした。H14年度では、健康な中高齢男性15名を対象に筋力トレーニングを行い、効果が大きかった被検者(n=3)と効果が小さかった被検者(n=3)間において、トレーニング後の骨格筋における遺伝子発現動態を検討した。またH15年度では、新たに中高齢男性11名を対象に筋力トレーニングを行い、効果の大きかった被検者2名と小さかった被検者2名においてそれぞれ、トレーニング前後での遺伝子発現動態を検討した。 その結果、効果大小間での骨格筋遺伝子発現では、効果大において共通して遺伝子発現が1/2倍であった遺伝子は3つ検出され、2倍であった遺伝子は6つ検出された。またトレーニング前後において遺伝子発現を検討した結果においては、トレーニング効果大で共通してトレーニング後に発現が変動した遺伝子は3つ検出され、トレーニング効果小で共通してトレーニング後に発現が変動した遺伝子は5つ検出された。これら2つの実験において、検出された遺伝子で共通のものはなかったが。これらの遺伝子がトレーニング効果に影響を及ぼしている可能性は十分考えられる。今後、これら遺伝子において、プロモータ領域あるいはそれら遺伝子の発現を調節する因子において遺伝子多型を検索し、トレーニング効果の個人差との関連を明らかにすることにより、個別至適化されたトレーニングプログラムの提供につながる重要な基礎データとなるであろう。
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