ADHD児(3名)の自己コントロール力に及ぼす安静と運動の影響について調べるために、新APP検査、適応行動尺度の測定、計算テスト、ペグボード検査を実施した。新APP検査では、ADHD群は標準値に対して、注意力、動作の安定度(集中力)が有意に劣っていた。適応行動尺度からは、ADHD児には問題行動がみられ、ADHD児は自己をコントロールする力が弱く、そのために不適応行動を起こすことが示唆された。5分安静後および90m走後の計算テストとペグボード検査では、実験前値に対して後値で大幅に時間短縮が認められた子供がいたことから、ADHD児の自己コントロール力に対して、安静は確実に良い効果を与えること、運動はADHDの主徴のために安静に出来ない子供にも容易に実施でき、効果も期待できる方法であることが示唆された。 ADHD児の注意力や集中力の改善にどのような運動が効果があるかを調べるためには、注意力や集中力をみる必要があり、その方法としてCRT(選択反応時間)を測定した。CRTは選択の問題が易しすぎても難しすぎてもADHD児と健常児の差を検出できないため、どのレベルに設定するか検討し、測定した結果、色及び形を刺激とするCRTは、どちらも健常児の方がADHD児より速く、分散も小さく、間違いや無反応の数も少なかった。音を刺激とした場合には、結果に統一性がなく、個人差によるところが大きかった。このことより、注意力や集中力を色か形のどちらかを刺激とするCRT測定で評価することが可能であることが示唆された。
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