本研究は筋力増大の著しい児童期から成人に至る健常男子について、発育期を通した筋収縮機能の年齢変容を検討することを目的としたが、比較的新しい信号である筋音図(Mechanomyogram:MMG)の測定においては、安定した信号を得るための計測方法を検討する必要があった。MMGは、加速度センサーにより筋の振動を計測するので、体幹の動きや椅子の動きなどのアーティファクトが混入するとMUの活動様式の推定が困難となる。特に本研究では対象年齢域が広いので、体格に合わせて肢位を規定しやすい上下左右前後方向に調節可能なトルクセンサー取付け台を考案した。Kanehisaらの報告によると、10-12歳の最大筋力(MVC)は16-18歳の2/5で、筋断面積(CSA)の差異より顕著であることが報告されている。本研究では思春期前の12歳男児と思春期後の18歳でMVCを比較したところ、12歳のMVCは1/3程度であり、先行研究よりさらに低めであった。これは、座高の低い年少被験者においてMVC発揮時の肩関節のシート背部への固定の仕方に問題があると考えられ、シートの改良を行った。また、10-12歳のMMG応答は18歳の1/3から1/5となり、よりノイズの少ない安定した信号を得る必要がある。そこで、さらにトルクセンサー取り付け台に変更を加え、上下左右前後方向に移動可能のシートをセンサー取り付け台と一体化させた。今回はシートおよびセンサーの取り付け台の考案・制作に重点を起き、ランプ負荷による測定は終了しなかったが、MVCおよび50%MVCにおけるMMG応答はCSAの差以上に思春期前後で顕著であり、運動単位の動員様式など、筋の質的特性は思春期前後で変容することが推測された。
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