本研究は、競技スポーツにおける組織的情報戦時の活動と機能を明らかにし、競技力向上に有効なモデルを提示することを目的としている。今年度は、昨年度の基礎調査を踏まえ以下の事柄を明らかにした。 1.競技スポーツにおける情報戦略の定義化 「情報」と「戦略」について、それぞれの共通概念を整理した上で競技スポーツにおける「情報戦略」について以下に示すような定義と条件を提示した。この定義と条件は、2003年4月現在、JOC情報戦略フォーラムにおいての発表や、また全日本スキー連盟情報戦略委員会など多方面で引用された。 【競技スポーツにおける情報戦略についての定義】 『競技スポーツにおける情報戦略』とは、競技力向上のために、有用と思われる『知れせるべき内容』を、効果的に活用しようと意図する、目標達成のための長期的な営み(駆け引き)。そして、情報戦略を行なうにあたっては、以下のような条件が付加される。(1)(情報の)送信側の内容に明確な意図があること(メッセージ)、(2)受信者が特定されていること(ターゲット)、(3)受信側の行動選択に有用であること(コンテンツ)、(4)出所の信頼度を把握、見極めていること(ソース)、(5)送信側が送信される情報のタイミングや内容を操作し得ること(コントロール)、(6)送信側の活動が、予め想定された結果に対して有効に機能すること(エフェクト)。 2.その他 今年度は、以下に示す研究および調査も併せて行なった。 1)競技スポーツにおける分析のための「情報」の整理とモデル化 2)国内競技団体に見られるテクニカル活動の整理と分類化 3)諸外国を含むオリンピック委員会(NOC)等の国家な「組織的情報戦略活動」の実際とその機能について明らかにするための調査を行なった。
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