研究概要 |
平成15年度は、2次元画像による時空間認知スキル評価のための実験を行った.その解析結果から,自由落下物体の位置予測に関して,興味深い現象が観察された. 平成14年度の研究では,仮想環境における物体運動を再現した実験から,現実環境における同じタスクの実験と同様の結果が得られた.このことから,仮想環境において再現した実験が,現実環境実験を反映することの妥当性が確認された.本年度は,コンピュータによって作られた仮想環境を利用して,打上げられたボールが自由落下する運動を再現し,実験を行った. 実験には,12名の健康な男子大学生(19-21歳)が,被験者として参加した.被験者には,矯正視力0.8以上,色盲など視覚障害がないことと実験参加への同意を確認した.実験タスクは,物体の自由落下運動の途中,遮蔽板で物体運動を遮蔽し,その後視覚刺激を提示した時の物体位置を回答させる予測課題であった.このタスクは,運動物体までの距離を2.5mに設定して実施した.さらに,眼球運動との関係を検討するために,物体までの距離が,3.5m,4.5mの距離条件においても,同じタスクを実施した.また,自由落下という加速運動だけでなく,一定速度の等速運動による物体運動をコンピュータにより再現し,遮蔽後の位置予測課題も行った. 実験から,落下物体の位置予測では,実際よりも位置を過少評価する結果が得られた.データ解析から,実際の速度よりも遅い落下速度で位置予測するという,予測速度低下現象が観察された.さらに実験から,この現象は,追跡眼球運動の角速度特性や物体運動における加速や等速などの物体運動様式との関連性がないことが明らかとなった.この現象の原因解明については,さらなる実験と検討を必要とし,今後の課題となった.
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