本研究は、世界各地において、都市スケールで、スピリチュアル・マッピング(宗教的世界の地図化)を行うための方法論を確立しようとするものである。そのために、この分野で先駆的な実績をあげている地域を訪れ、方法論的な議論を深めるとともに、プロテスタント、カトリック、ヒンズー、イスラム都市における宗教的実態にもとずくスピリチュアル・マッピングの可能性を探るものである。平成15年度には、ヒンズー地域の事例として、インドグジャラート州のアーマダバードの調査を行い、ヒンズーのみならず、イスラム、シク、ジャイナなどの諸宗教の並存の実態を観察、ききとりを実施するとともに、現地の地理学者を含む社会科学研究者たちとのディスカッションを行った。特に、インドにおいては、伝統的な信仰が、現在でもそのまま息づいているだけではなく、時代のニーズに合わせて、人々の生活に密着している実態が明らかにされた。さらに、ヒンズーとイスラムにおける社会的・空間的緊張関係の一端を捉えることができた。 日本国内では、主に尾鷲市の宗教調査を行った。ヤーヤ祭りや八幡祭礼などの実態を観察記録し、尾鷲市街地をくまなくまわり、観察可能な宗教関連施設や景観要素を地図上に落とした。それに加えて、尾鷲大庄屋文書の分析をし、尾鷲の宗教性の歴史的背景に迫った。 以上の二つの調査を柱としながら、宗教都市として顕著な景観を示す天理の調査、さらにバラモン教の主神であるインドラが日本的変容を遂げている事例として、柴又帝釈天の調査などを行った。
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