一年目は、琥珀・漆の両者についてそれぞれに現代の標準試料および出土試料を下記に示す様々な条件で分析を行ない、その結果を比較検討した。 (1)試料の形状(塊のまま、細かく砕き粉状にしたものなど) (2)試料の重量(ごく微量(1mg以下)、その10倍量) (3)昇温時間(毎分20℃、毎分10℃、変化の現れる温度領域については毎分1℃) その結果、試料の形状によって熱量の変化に違いが生じることがわかった。粉末と塊では明らかにTGA曲線およびDTA曲線に変化が見られた。TGA曲線は重量減少変化が粉体の場合では変極点が不明瞭で徐々に減少が見られるのに対し、塊では400℃付近から急激に減少が見られた。また、DTA曲線でも形状が小さくなるほどそのピークはなだらかで、塊になるほどは鋭く、ピーク位置も高温側にシフトした。 なお、重量や昇温時間についてはピーク位置が若干ずれるもののその形状にほとんど差は見られなかった。TGA曲線については、減少率がマイナスになってしまう場合があり原因は今のところ不明である。また、同一の資料であっても部分的に劣化状態に差がある場合も熱量の変化に差が生じることがわかった。 これらの差をどのように解析するかは現在検討中である。今後様々な状態の遺物を上記の条件で測定を行い、その結果を蓄積し、分析方法の方向性および結果の応用方法を導き出したい。さらに得られた基礎データから劣化状態を把握することで、文化財の適切な保存に役立てると考える。
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