昨年度、琥珀および漆について再現性の得られる条件を検討した結果、一定の条件で再現性のある結果を導くことが可能であることがわかった。そこで、この条件でまず琥珀の熱分析を行なった。 その結果、標準琥珀では久慈市産といわき市産は比較的似通った変化を示したが、銚子市産は異なった結果となった。これは赤外分光分析の結果とも一致した。 次に、同様の条件で出土琥珀の熱分析を行なった。その結果、縄文時代および古墳時代の琥珀ともそれぞれの曲線は異なるが大きく数グループに分けることが可能であることがわかった。すなわち、DTA曲線で400、550℃付近にピークが見られるグループと450℃付近にピークの見られるグループおよびその2つのピークの強度の高低によりグルーピングできることがわかった。これらは構成成分の違いによる可能性が高いと考えられた。また、それぞれのグループは標準琥珀に見られる2タイプと完全に一致はしないが、それぞれの傾向は似通っていることもわかった。これらの結果が標準琥珀に見られる産地の違いによるものか、劣化状態の違いによるものかについては今後、さらに多くの出土遺物の分析を行ない、データを蓄積する必要がある。また、少量の産出地および外国の琥珀についてもデータを収集し比較検討することが必要である。今後、標準琥珀を劣化させたものについても、同様に分析を行ない比較したい。 さらに、有機高分子化合物である漆および膠などについても多くのデータを蓄積し熱的挙動を調べ、これらの劣化機構を探っていきたい。
|