研究概要 |
本研究の目的は次の通りである。 中学校教育において,理系教科(数学科・理科・技術科)を横断する,新しい学習単元『モデリング』を構築・実践し,既存教科の教授・学習への効果・弊害などを特定する。 この目的を達成するために,平成14年度には,次の下位目標の達成を目指した。 ●理系教科において横断的な「モデリング」を概念規定する。 この目標を達成するために,次の2点を実施した。 1.数学科・理科・技術科における「モデリング」の概念に関する先行研究の収集と整理 2.各教科における「モデリング」の実践事例の収集と整理 「1.数学科・理科・技術科における「モデリング」の概念に関する先行研究の収集と整理」の結果,次のことがわかった。 それぞれの教科において「モデリング」の概念が用いられている。こうした概念には,"現実を映す鏡"という意味で共通な側面と同時に,合理性・説明可能性・実用性など,教科によって異なる側面がある。特に,教科によって異なる側面が,"現実を映す鏡"という共通な側面とともに,現象の理解・説明・予測に関して相互補完的である。それゆえ,中学校レベルにおける理系教科の横断的な単元によって,この相互補完性を理系教科の教育にいかすことができるという見通しを得た。 「2.各教科における「モデリング」の実践事例の収集と整理」の結果,次のことがわかった。 イリノイ大学の「数学科・理科・技術科の統合カリキュラム」プロジェクト(IMaST<Integrated Mathematics, Science and Technology>)では,目的及び内容レベルでの統合が具体的に実施されている。ただし,"統合"の理論的な意味は不明確である。一方,我が国では,東京大学教育学部附属中学校で,理科と技術科の合科カリキュラムが構築・実施されている。ただし,教育的な配慮もあって,内容レベルでの組み合わせに留まっており,目的・内容レベルでの統合には至っていない。「モデリング」の概念を中心として,目的・内容レベルにおける理教科の理論的に統合することによって,これまでにないカリキュラム研究となりえることが示唆された。
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