本年度は、特に金沢高等師範学校において実施された特別科学教育に関する史資料収集を中心にし、他の高等師範学校における特別科学教育に関しても継続して史資料を収集した。 これまで得られた史資料を、普通科学カリキュラムと比較し、目的論の点で特別科学教育が理科教育史において特異な位置づけができると指摘し、以下の内実を明らかにした。 1)特別科学教育の目的論が、国家的・経済的価値観に基づいており、これまで、あるいは現在までの目的論とは違うこと。 2)特別科学教育の理数系カリキュラムに関しては、普通科学カリキュラムよりも時間数が多いが、特別科学教育実施校においては、数学、物象、生物の時間配当が違うこと。 3)学習内容は、普通科学カリキュラムと重複するところもあるが、特別科学教育実施校では、高等師範学校や帝国大学において、実験・観察などの活動を実施したり、高等師範学校や帝国大学の教官による授業を聴講していたこと。 4)特別科学教育を実施校の中には、普通科学カリキュラム以上に、ものづくり的発想に基づく工作が重視されていたこと。 5)特別科学教育実施校では、児童生徒自身による探究活動が極めて重視されていたこと。 これらの特色は、今日のスーパーサイエンス・ハイスクールにおいて実施されている内容と極めて類似している。 ただ、特色ばかりではなく、短期間ながらいくつかの重要な問題点も指摘されている。 以上のような特色や問題点は、今後の科学教育のあり方を考える上で極めて参考になる歴史的史実であると結論づけた。
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