初年度である平成14年度は、言語文化的共軛不可能性を教師教育プログラムに組み込む可能性を探った。その第一段階として、当教育学部附属小学校教諭の協力を得て、「規約主義科学観に基づく理科授業実践」の可能性を探った。この研究の成果は、第26回日本科学教育学会(島根大学)において口頭発表として公表した。 この研究は、国内はもとより諸外国特に東南アジア・アフリカ諸国の科学教育事情、即ち「言語文化的共軛不可能性をどのように意識しているか或いはいないか」に関する調査が大いに参考となる。この調査のため、本年度は研究代表者が平成14年6月10日〜21日まで、タイ王国・マレーシア国に出張し関係研究者と研究討議を行った。特にマレーシア国においては、同年秋に本科学研究費補助金で招聘予定のUniversiti Sains Malaysia(マレーシア科学大学)のSchool of Educational Studies(教育学部の科学教育担当に相当)に所属するDr.Loo Seng Piew助教授と来日日程に関する最終的打ち合わせを行った。これは、招聘をより実りあるものにするために不可欠であった。 打ち合わせに従って、Dr. Loo Seng Piew助教授を平成14年11月9日〜17日の日程で招聘し、研究討議を行った。Loo助教授との議論においては、「自然を実験において観察する」に相当するマレーシア語-実際に初等中等学校の科学の授業で使われている言い回し-を検討し、英語を仲立ちとする言語文化的共軛不可能性を浮き彫りにする可能性を探った。マレーシア語は、その多くの語彙をアラビア語から借用しており、この意味においてもイスラム教の影響が圧倒的である。従って、キリスト教の影響が圧倒的な西欧文化圏の科学教育との比較が極めて実り多いものになる可能性を確かめた。現在、これまで得られた成果の国際学会における発表を検討中である。
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